2024年問題の対応を目前に控え、ドライバーの長時間労働とその対策について多くの方が頭を悩ませていることと思います。

2024年問題として取り上げられるドライバーの残業上限規制は年間で960時間、1か月に割りなおすと80時間となり、逆に何とかなると思われる方も多くいらっしゃるかもしれませんが、注意すべきことは残業規制だけではありません。

代表的なものは健康リスクです。

労働法では残業80時間に収めることをだけでなく、労働者の健康についても経営者として安全配慮義務がかせれられています。

80時間以内に抑えた上で、更に注意すべきことを3点確認しましょう。

1⃣労災のリスク

ドライバーが発症する脳梗塞などの脳疾患や心筋梗塞などの心臓疾患は、加齢や生活習慣により悪化し発症するもです。

しかし、労働が特に過重であることが認められた場合には、病気の発症について有力な原因があったとして労災の対象となります。

労災の対象となる疾病

脳血管疾患 虚血性心疾患
脳内出血(脳出血) 心筋梗塞
くも膜下出血 狭心症
脳梗塞 心停止(心臓性突発死を含む)
高血圧性脳症 重篤な心不全、大動脈解離
                                                     厚生労働省資料より抜粋

脳疾患、心臓疾患の認定要件

ではもし上記疾患が発症した場合には、業務が原因となるかの判断基準はどのようなものがあるのでしょうか。

下記表いずれかの「業務による明らかな過重負荷」を受けたことが要件となります。

要件1:長時間の過重業務 発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したこと
要件2:短期間の過重業務 発症に近接した時期において、特に過重な業務に就労したこと
要件3:異常な出来事 発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したこと
                                                     ~厚生労働省資料より抜粋~

 

労災疾病に対する判断基準(厚生労働省資料より抜粋)

  • 発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月あたり概ね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発祥との関連性は低い
  • 概ね45時間を超えて労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性は徐々に強まる
  • 発症前1か月間におおむね100時間または発症前2か月間無いし6か月間にわたって、1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合には業務と発症の関連性が強い

この基準に照らし合わせると80時間の残業をさせることがいかに危険なことであるかが分かっていただけると思います。

ドライバーは残業代欲しさから長時間労働を望んでくるケースが多々あると思いますが、いざ病気が発症した場合は態度を一変させ、会社が労災を認めない場合は訴訟も示唆してくることもあります。

ドライバー本人が自ら望んだこととして納得していても、その家族から訴えを起こされることもありえるため注意が必要です。

2⃣残業代増加のリスク

現行法下では月60時間超の残業に対して、大企業では50%、中小企業では25%の割増賃金を支払う必要があります。

しかし2023年4月より中小企業においても50%の割増賃金を支払う必要があります。

法改正後の割増賃金を計算してみましょう。

時給1,200円の人が80時間の残業をした場合

 

法改正前 

80時間×1,200円×1.25(割増率)=

合計 120,000


法改正後 

60時間×1,200円×1.25(60時間以下の割増率)=90,000円

20時間×1,200円×1.5(60時間超えの割増率)=36,000円

合計 126,000円

 

規制前の残業代と比べると6,000円の支出増となります。経営側からするとたかだか6,000円と考えがちですが、1件いくらの技能給をもらうドライバーからすると6,000円も収入が増えるというのは大変魅力的で手放しがたいものになります。こうなると我も我もと残業を行うようになり、結果として慢性的に長時間労働を行う生産性の低い職場になるでしょう。

ドライバーは一度手にした金額を基準に生活を組み立てるようになり、中には住宅ローンを組む者も出てきたりします。そうなると残業を減少させることが困難になり、残業を減少させることによる退職者が続出することになるでしょう。

3⃣採用時の応募減少リスク

一昔前はトラックドライバーを志望する方は「どれだけ長時間労働でもいいから稼ぎたい」という方が非常に多くいました。

運送業は仕事がきついけれども大きく稼ぐことができる業種だったからです。しかし働き方改革によりそれも昔の話となってしまいました。

完全週休二日制を導入する企業の増加

大手運送会社を中心にトラックドライバーにも完全週休二日制を導入する企業が増えています。大手運送会社は、営業職員や各課職員等オフィスワークを行う事務職員が相当数必要で、これらの職種は運送業以外の一般企業との間で採用合戦が行われています。そこで一般企業同様に完全週休二日制を導入する必要がありますが、事務職員にのみに完全週休二日制を導入することは就業規則上困難であり、ドライバーにも適用されるようになっています。

完全週休二日制を導入する為にはドライバーを必要最低数を超えて採用する必要があり、これが一人当たりの業務量を減少させ残業時間も短縮することにつながっています。

これに伴い応募する側も残業時間が少ない会社への就職を希望する人が増えてきています。特に他業種からの転職者で今まで残業が少なかった人や、長時間労働に嫌気がさしたドライバー経験者からの求職は激減しています。とはいえ、長時間労働をして残業代を稼ぎたいドライバー志望者も少なからずいるため、採用のミスマッチが起きないよう面接時の確認が重要となります。

この記事のまとめ

長時間労働には、労災のリスク・残業代増加のリスク ・応募減少のリスクがあります。

残業時間の削減は緊急の経営課題と言えるでしょう。

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